688 :虚空 ◆lWKWoo9iYU :2009/06/17(水) 21:36:44 ID:kOT+Y6Db0
駅前広場のベンチに座り、虚空を眺めていた。
過酷な環境に耐えかねた俺は、もう考える事も放棄していた。
ひたすら俺は、一週間前に出会った若い男を待っていた。
タバコに火を点ける音がする。いつの間にか、彼が俺の隣に座っていた。
「前に会った時より酷くなってるね、お兄さん。もう限界でしょ?」
若い男は俯きながら、地面に向かって煙を吐いた。
「本当に助けてくれるのか?」
俺はすがる思いで尋ねた。
「まぁ、やれるだけのことはやりたいね。
このままお兄さん放置してると、死んじまうのは眼に見えてるし。
それを分かってて死なしちまったら目覚めが悪い」
「何をする気だ?」
「まぁ、付いて来なよ」
そう言うと若い男は、駐車してあった車に俺を乗せた。
暫く車を走らせ、ビルの中に入る。その中に、若い男の事務所があるそうだ。
『○△×探偵事務所』と書かれたビルの一室。ここが若い男の事務所。
「探偵?」
俺がそう呟くと、若い男は「本業はね」と答えた。
事務所の扉を開けると、中には誰も居ない。
「あぁ、今はみんな出払ってるよ。多分、社長は居ると思うんだけどね」
「俺は金なんか持ってないぞ」
「ん~、うちの社長、金にはうるさいけど、根は良い人だし、多分大丈夫」
そう言うと若い男は、奥の『社長室』と書かれた扉の前に進む。
軽く2回ほどノックをすると、中から「どうぞ」と言う返事がした。
扉を開けるとそこには、如何にもキャリアウーマンといった風貌の女が居た。
この女が社長だ。 つきまとう女3/9の続きを読む